近年、デジタルカメラが主流となり銀塩カメラが肩身の狭い思いをしている一方、クラッシック・カメラと呼ばれる中古カメラについては、まだまだ根強い人気があるように思えます。今回は、このジャンルに入るであろうASAHI PENTAX SPを取り上げたいと思います。
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いろいろ調べてみると、このカメラは東京オリンピック開催年である1964年(昭和39年)に発売が開始されましたが、当時このカメラは「ある機能」により当時一大ブームを巻き起こしました。その機能とは「TTLスポット測光」という機能です。TTLとは「Through
The Lens」の略で「レンズを通じて測光できる」ということです。今のカメラと比較すると何てことのない機能のように思えますが、当時は画期的な機能だったようです。
この当時のカメラは露出計が内蔵されていたとしてもレンズと別の位置にある受光部分で測光するものだったようです。ということは、カメラとは別に露出計を手に持って撮影したということになります。その当時のカメラでは素人には写真撮影が億劫になりそうです。
このカメラはそれをする必要がない。レンズを通した光を直接計るものなので、ファインダーを覗きながら露出を調整できるようになったのです。といっても世界初のTTL測光の一眼レフカメラは1963年に東京光学(現トプコン)のトプコンREスーパーであったのですが、価格面からそれまでのヒット商品にはならなかったようです。ちなみにPENTAX SPの発売価格は50mm F1.4のレンズ付で51,000円でした。
機能面や価格面で充実したこのカメラのおかげで、素人でも敷居が低くなり写真撮影が気軽にできるようになったことを考えると、このカメラの写真文化への貢献は甚大なものがあると想像します。
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レンズの脇にある「SW」と書いてあるレバーを上げると測光を開始します。後は絞りとシャッタースピードを調整し撮影します。
クラシック・カメラはこのような一連の操作を自分で行わなければいけませんが、この動作こそが写真を撮る基本操作なのだと思い知らされるところに味があります。
40年経った今でもちゃんと測光まで行ってくれるこのカメラ。現代のデジタル一眼レフのうち、40年後ちゃんと動いてくれるカメラはあるのでしょうか?
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さて、実はこのカメラは私が購入したものではなく亡き父が姉の誕生の際、購入したものです。先程、このカメラの発売価格は51,000円で敷居が低くなった云々などと述べましたが、当時のサラリーマンの平均月収は65,000円程度であり、母からその当時の生活の様子を聞いた限りにおいては、このカメラとて決して安い買い物ではなかったはずです。私の父はとりわけカメラ好きという訳ではなかったので、初めての娘の誕生がよほど嬉しかったことが想像できます。
もちろん、私が誕生した際もこのカメラは活躍しました(ご他聞に漏れず弟の私のほうが写真の枚数は少ないのですが・・・)が、いつの頃からかこのカメラは押入れの奥にしまわれ、以来、日の目を見ることがなくなりました。
その後、私がカメラに興味を持ち、押入れの奥から引っ張りだされたのはここ5年くらいのことです。私がこのカメラをいじくりだし、壊れて動かない部分を上野にある個人で経営している修理工場まで修理に出すと、普段面倒臭がりな父が修理後のカメラを私の代わりにわざわざ上野まで取りに行ったものです。やはり、このカメラにはそれなりの思い入れがあったのでしょう。
そして、昨年、私に待望の娘が誕生しました。また、今日、父が亡くなってちょうど2年が経ちます。実は今日は父の命日なのです。
私の家族の記録を刻んだこのカメラで、今度は私が娘の成長を記録したいと思っています。
⇒ このカメラの作例は コチラ と コチラ
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